アパート建築に限らず、一戸建てから大規模マンション、商業施設からオフィスビルまで、建物を建築する際、建物を利用する際のルールを定めたものが建築基準法になります。土地活用としてアパート建築や賃貸経営を検討している方にとっては、かならず押さえておくべき法律ですので、ぜひ知識を深めておいてください。
太平洋戦争終結後、建物の建設や利用に関する基本ルールを定めたものが1950年施行の建築基準法になります。その後、社会情勢や時代背景、時流の変化などに応じ、改正が繰り返されています。例えば、現在の新築物件には、1981年に改正された耐震基準(通称:新耐震)を最低でもクリアしていなければなりません。
ちなみに建築基準法上、「アパート」という用語は存在せず、「共同住宅」として扱われます。そうした建築基準法のすべてを理解し暗記するのはなかなか難しく、現実的ではありませんが、土地活用としてアパート建築を行うという場合には、本ページでご紹介するポイントを押さえておくことをお勧めします。
そもそも建築基準法には、建築に関する多種多様なルールが細かく規定されており、すべてを闇雲に暗記することは困難極まりないというのが実情です。そこで、法律家ではない一般の方がまず知っておくべきは、建築基準法は大きく分けると「単体規定」と「集団規定」という2つの分類があるという点になります。
建築基準法のなかの「単体規定」とは、簡単に言えば、建築物そのものに対する基準を定めたものになります。例えば、近年ますます関心の高まっている耐震性を筆頭に、建物の耐火性や防火性など安全に関する規定は、単体規定の一部。その他にも、居室の採光性や換気性、衛生設備の基準、さらには万一震災が発生した際の避難経路を確保するといった事柄も単体規定の領域。こうした建物そのものの基準である単体規定は全国一律に適用され、地域に関係なく同じ水準が求められます。
単体規定が建物そのものの基準であるのに対し、建築物が集まって形成される市街地の環境整備等を目的とする規定が「集団規定」になります。例えば、用途地域による建築用途の制限や建ぺい率・容積率の上限、高さ制限や斜線制限、日影規制、接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接する必要)、防火・準防火地域での構造制限などが該当します。集団規定は地域の環境や住民の安全・快適性を守るため、主に都市計画区域や準都市計画区域内で適用されます。
アパートやマンションなどの共同住宅は、不特定多数の人が利用し、かつ火災発生の恐れがあるため、学校や病院、劇場などと同じく特殊建築物に分類されます。床面積100㎡超の場合は建築確認申請が義務付けられており、所定の書類を市区町村などの審査官や指定確認検査機関に提出し、法令や条例の規定に合致しているかの審査を受け合格しないと、工事に着手することはできません。
そもそも日本国内の土地は都市計画法によって「都市計画区域」と「都市計画区域外」に分類されており、アパートが建てられるのは前者の都市計画区域になります。ただし都市計画区域もさらに細かく分類されており、それらのなかで「工業専用地域」はアパート建築不可となりますので注意が必要です。
建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合のこと、容積率とは敷地面積に対する延べ床面積の割合のことです。物件を建てる土地が都市計画法に定める用途地域のどの分類に該当するかによって、建ぺい率・容積率の上限が変わってきますので注意が必要です。
敷地が接する前面道路や隣接地の日当たり、通風を確保し、建物同士がお互い圧迫しないように、用途地域や都市計画などによって、建物の高さ上限が規定されています。例えば第1種・第2種低層住居専用地域においては、10メートルまたは12メートル以内のどちらかとなります。
アパートに限りませんが、建物を建てる敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないと定められています。
都市部などの住宅密集地では火災の延焼を防ぐために「防火地域」または「準防火地域」が設定される場合があります。例えば防火地域で100㎡超または3階建て以上のアパートを建てる場合、柱や壁、階段などの主要構造部を耐火構造とし、外壁の開口部分に防火戸などを設けた耐火建築物とすることが義務付けられます
以上の通り、建築基準法は建物の安全性や快適性、周辺環境との調和を図るための重要なルールになります。アパート建築の際には計画段階から建築基準法を正しく理解し、適切な設計・申請を行うことが、安心・安全なアパート経営の第一歩と言えるでしょう。しっかりと留意しておいてください。