アパート経営をする際に知っておきたい坪数ごとにみるアパート建築費用の目安や構造の違い、アパート建築の規制などについてまとめました。
アパート建築費用は、建物の大きさだけでなくその構造によって異なります。主な構造は、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)です。国土交通省の発表している「建築着工統計調査(2022年度)」のデータをもとに共同住宅(貸家)の坪単価を算出してみたところ、木造は57.5万円、鉄骨造は86.3万円、鉄筋コンクリート造(RC造)は89.0万円となりました。
法定耐用年数 | 防音性 | 耐震性 | 耐火性 | 平均坪単価 | |
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木造 | 22年 | ✕ | △ | ✕ | 57.5万円 |
鉄骨造 | 34年 | △ | ○ | ○ | 86.3万円 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 | ◎ | ◎ | ◎ | 89.0万円 |
※参照元:国土交通省「建築着工統計調査-建築物着工統計(2022年度)」(https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003114524)
※この統計調査の集計項目には、建物本体の工事費のほかに、設備費用(電気・ガス・給排水・冷暖房など)も含まれています。
木造は断熱性や吸湿性に優れており、日本の気候に適していることから、戸建住宅やアパートに用いられやすいのが特徴。一般的に遮音性や耐火性には難があると言われていますが、最近では優れた性能を持つ木造住宅商品も登場しています。なにより、比較的建築費用が安く抑えられるのがメリットでしょう。
鉄骨造は耐震性や防火性にも優れ、間取りの自由度が高い構造です。比較的工期が短く、後々リフォームしやすい点もメリットですが、いずれの性能においても優れている分、建築コストは高くなりがちです。
鉄筋コンクリート造(RC造)は耐久性に優れており、マンションや3階建て以上のアパートなどの建築に用いられます。間取りやデザインの自由度も高く、オリジナリティのある建造物を建てることができますが、建築コストが高くなるのがデメリット。収益見込みと建築費用のバランスをしっかり計算しておかなくてはなりません。
構造 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
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建築費用相場 | 1,150万円 | 1,726万円 | 1,780万円 |
構造 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
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建築費用相場 | 1,725万円 | 2,589万円 | 2,670万円 |
構造 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
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建築費用相場 | 2,300万円 | 3,452万円 | 3,560万円 |
構造 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
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建築費用相場 | 2,875万円 | 4,315万円 | 4,450万円 |
構造 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
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建築費用相場 | 3,450万円 | 5,178万円 | 5,340万円 |
※参照元:国土交通省「建築着工統計調査-建築物着工統計(2022年度)」(https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003114524)
※この統計調査の集計項目には、建物本体の工事費のほかに、設備費用(電気・ガス・給排水・冷暖房など)も含まれています。
上の表は、国土交通省が発表している「建築着工統計調査(2022年度)」のデータをもとに共同住宅(貸家)の坪単価を算出し、20~60坪の費用相場を計算したものです。建ぺい率や容積率を加味せずに、1フロアを基準としたものであるため、2階建て以上にすることで延べ床面積が変わることから建築費用には大きな幅が生じます。
建ぺい率や容積率などの規制を受けることにより、敷地面積があっても建物を建てられる面積や延べ床面積は大きく制限されます。RC造の坪単価は木造の約2倍程度を目安とするといいでしょう。建築費用だけで考えると木造がコストを抑えられそうですが、住宅性能の問題やメンテナンス費用などを長い目で見ると一概に木造がおすすめとは言えません。また、アパート経営では部屋数を確保することと入居率を高めることが収益につながるため、価格だけでなくデザイン性などで差別化できる建物を建てた方がいいでしょう。
アパート建築というと100坪以上の広い土地がないと不可能なイメージがありますが、実際の土地活用では60坪以下の土地を利用してアパート経営をすることも少なくありません。ただ、建物は敷地いっぱいに建てられるとは限らず、建ぺい率や容積率によって大きく左右されます。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建物を建築できる面積の割合のことです。たとえ100坪の土地を所有していても、建ぺい率が50%であれば、50坪の土地にしか建物を建築することができません。建ぺい率は用途地域ごとに都市計画法などで上限が定められています。第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住宅地域などの場合の建ぺい率は30~60%。第一種・第二種住居地域、準住居地域であれば50~80%などのように定められています。
容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合のことです。建ぺい率と同様に容積率も用途地域ごとに上限が定められています。第一種・第二種低層住居専用地域、田園住宅地域などの場合の容積率は50~200%。第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域などの場合の容積率は100~500%となります。アパート経営では階層を増やすことで部屋数を確保して収益をあげられます。しかし、100坪の土地があっても建ぺい率60%、容積率150%であれば、3階以上のアパートが建てたくても2階建てまでしか建てられません。
アパート経営をするうえで収益を妨げる大きな問題のひとつに空室があります。何ヵ月も複数の部屋で空室が続けば予定していた家賃収入を得ることができず、収益どころか建築に投資した費用すら回収できないリスクもあるでしょう。駅近で周辺にコンビニやスーパーなどがあるなど、周辺環境に恵まれている立地であれば入居率も高くなるでしょうが、入居者を惹きつけるのはそれだけではありません。
駅から少し離れていても常に満室状態が続いている人気のアパートもあります。その理由は、入居者のニーズやライフスタイルに合わせたデザイン性の高いアパートだからです。外観、内装ともにおしゃれで入居者の満足度が高ければ、周辺環境に関わらず選ばれるアパートになります。建築費用を抑えることだけにとらわれるのではなく、何年経っても魅力があるデザイン性に優れたアパートを建てることが長期的な収益につながると言えるでしょう。
20坪の土地は約66㎡でいわゆる狭小地と呼ばれるサイズの土地となります。アパート建築には高い技術を伴うこともあり、対応してくれるハウスメーカーや工務店はそれほど多くありません。アパート経営では部屋数を増やすことで収益を得ることができるため、20坪の土地の場合は、アパート建築の他の土地の有効活用を検討する必要もあると言えるでしょう。
30坪の土地は約99㎡で、やはり狭小地と呼ばれる土地のひとつであると言えます。1LDKのアパートであれば各フロアに1戸程度が一般的です。階層を増やして部屋数を増やさないと建築費用だけがかかって十分な家賃収入を得られない可能性も考えられます。
40坪の土地は約132㎡で、やはり戸建住宅でも狭いイメージがあります。アパート経営では、エントランスを広くとることも難しいので、1Kや1Rなどでデザイン性や設備の面で他のアパートと差別化を図らなければ十分な収益を上げることは難しいでしょう。
50坪の土地は約165㎡で、戸建住宅では4LDK程度のものが建てられる広さがあります。しかし、アパート建築では、建ぺい率や容積率などの規制を受けるため、実際には30坪にも満たない建物しか建てられない場合もあります。
60坪の土地は約200㎡で、戸建住宅だと庭付きの十分な広さがあります。しかし、アパート建築では建ぺい率や容積率により建坪が半分ほどになる場合もあり、階層を増やさないと十分な収益が得られない場合もあります。
アパートの工事費を支払うタイミングは、契約時に1回目、着工時に2回目、竣工時もしくは上棟時に3回目…と3回に分割して支払うケースが多いようです。建築費を均等に3回で割って、というところもあれば、契約時に5%、着工時に60%、竣工時に残りの35%…という会社もあり、ハウスメーカーによって異なります。
アパートは施工時期が短く、そのあいだに大きなお金が動いていきます。支払いのタイミングとそれぞれのタイミングで支払う大まかな額を確認したら、その条件で支払い可能かどうかしっかり確認しましょう。
ローンを組む予定だが、竣工前に融資が間に合わないという場合は、ローンが実行されるまで一時的に借りることのできる融資『つなぎ融資』を利用することができます。条件は銀行によって異なるので注意しましょう。
健全に、収益を得られるアパート経営を行いたいのであれば、投資額の3~4割を目標に自己資金を作っていきましょう。
1割程度が自己資金の最低額とされていますが、融資審査に落ちる可能性は否めません。3割程度の自己資金があれば、融資可否の判断評価が厳しい金融機関であっても審査を通過できる確率が高まります。
また、自己資金が多ければ、ローンの返済額を減らすことができますから、毎月の返済負担が軽くなります。ローン破綻の予防になるうえ、もし建築の諸費用が多少変動しても対応できるなどのメリットもあります。
アパート経営を始めることのできる自己資金の最低ラインは、建築額の1割程度と言われています。
金融機関の融資における審査の基本は、将来的に返済を続けられるかどうかの『信頼度』です。金融機関としては貸し倒れのリスクを避けたいので、計画的に自己資金を用意できない相手であれば、融資の審査を厳しくせざるを得ません。逆に言えば、その用意ができればできるほど、返済の滞りや破産のリスクが低いと判断されるため、審査を通る可能性が高くなるのです。
自己資金1割はあくまで最低ラインであり、アパート経営において推奨される額では決してありませんから、「1割あれば、ぜったいにできる」とは考えないほうが賢明です。
しかしながら、短期間で資金を作るのは難しいですよね。投資資金の全額を金融機関の融資によって賄う『フルローン』を検討することも可能ではあります。自己資金がゼロでも始められるので、「元手はないけれどもすぐに不動産投資を始めたい」という方は考えてみてもよいでしょう。審査は厳しいものの、可能性がないわけではありません。
しかし、フルローン、または少額の資金で融資が成立したとしても、将来的に毎月の返済のハードルは高くなりますし、万が一アパート経営がうまくいかない場合は返済の負担が重くのしかかります。デメリットやリスクも考慮して、慎重に考えるようにしましょう。