アパート経営の敵は想定した賃料収入を妨げる空室です。管理会社と家賃保証の契約を結べば、空室の有無に関わらず一定額の家賃を支払ってくれます。その仕組みや注意すべき点について説明します。
家賃保証とは契約により空室が発生しても本来受け取れる家賃のうち、事前に取り決められた一定率の金額を管理会社が支払ってくれる制度です。サブリース契約に包括されていることが多く、オーナーにとっては空室リスクを回避できるメリットの大きいシステムであると言えるでしょう。
家賃保証は、管理会社がオーナーからアパートを棟ごと賃貸契約し、入居者と転貸借契約を結ぶ仕組みになっています。管理会社が毎月取り決められた一定額の賃料をオーナーに支払うシステムで、入居率に関係なく固定額を支払う方式と入居実績に伴い支払額が変動する方式があります。ただし、家賃保証は特別な契約ではなく賃貸借契約と同じであるため家賃の減額、増額の可能性があり、定額の家賃が保証されるわけではありません。
空室があっても一定の家賃を保証してくれる家賃保証ですが、管理会社から契約者に対する説明不足からトラブルも生じています。訴訟まで発展するケースも少なくないことから、国土交通省は2016年9月1日付で契約者保護を目的として「サブリースに関するトラブル防止について」を通知。家賃保証を含んだ契約を管理会社と締結する前には、リスクやトラブルが生じるおそれがないか、しっかりと確認しておくことが大切です。
参照元(PDF):国土交通省「アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!」:https://www.mlit.go.jp/common/001258496.pdf
新築でアパート建築をした場合、入居者募集にある程度の時間を要することから家賃保証に60日程度の免責期間が設けられている(※)ことも少なくありません。免責期間によって家賃収入がどうなるのかについて一例を示します。
(※)参照元:イエウール(https://ieul.jp/column/articles/15321/)
総戸数10戸:家賃8万円:礼金:2か月分:家賃保証85%:築後1年満室の場合
家賃保証なし | 家賃保証85% | |
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家賃 | 8万円×10戸×12ヶ月=960万円 | 8万円×10戸×10ヶ月×85%=680万円 |
礼金 | 8万円×2ヶ月×10戸=160万円 | 0円 |
オーナー収入合計 | 1,120万円 | 680万円 |
家賃保証なしと85%家賃保証の差額は440万円にもなります。アパート新築当初は物件に人気が集中することが多いため、オーナーにとっては礼金による収入のピークにもなります。この差額分が全て管理会社の利益になるのはもったいないと言えるでしょう。
家賃保証を伴うサブリース契約は10~30年間となることがありますが、その期間中最初に決めた賃料水準が継続されるとは限りません。契約書のなかに賃料改定が含まれている場合は、保証期間中であっても定期的に家賃の見直しが行われます。空室が続く場合は管理会社から家賃の減額を求められるでしょう。オーナーは本来の家賃収入が得られなくなるため、当初の収支計画がくるってしまうことになります。
築年数が経過すると建物が劣化して、大幅な修繕・改装工事が必要となることがあります。外観や資産価値を維持するためには必要な対策です。しかし、管理会社の入居者確保が難しくなったと判断するタイミングとして、家賃保証が切れるシステムになっていることも少なくありません。
家賃保証はあくまでも空室があることを前提としたものであり、本来設定した賃料を得られるものではありません。また、家賃保証には様々なトラブルやリスクの可能性があります。アパート経営で重要なことは、常に満室状態を維持することです。何年経っても入居者に選ばれる魅力的なアパート建築によって空室リスクを回避しましょう。